最後の手紙

みなさま

ながい間 本当に 本当に

ありがとうございました

おなつかしい皆様とご一緒させていただいたお教室

今すぐにでも

とんで行って

お会いしたい

お一人 お一人の笑顔と

お声に囲まれて

本当に 山ほどの 倖せをいただきました。

その思い出は私の大切な宝物です。                        

まばゆいばかりの新緑に つつじの花が咲いている散歩道

その花が 皆様 お一人 お一人の笑顔になって 私に話しかけてくださいます

ずうっと ずうっと ご一緒させていただきたい思いでしたのに 私ごとで

皆様には 本当に ご迷惑をいたして ご心配を おかけしてしまいました。

どうか、これからも

お倖せな人生でありますよう・・・。           ひさ


菫はこの手紙を、ひさとの約束通り ひさが旅立った後に沢山の方々にお送りした。

それは菫にとって とても悲しい作業だった。その膨大な数の封筒の一通一通の宛名書きをできる限りの丁寧さで、注げるだけの注意を払って書いた。

するのではありません、させていただくのです。ひさが口癖のように言っていた言葉を何度も何度も自分に繰り返し言い聞かせた。するのではない、させていただくのだと。

沢山のお返事が返ってきた。菫はそのすべてに、菫の名前でお礼状をお出しした。

その お会いしたことのない方々との手紙のやりとりはまだ続いている。



名残りの花 (遺作)

          比佐子


うつくしさが

すべてではなかった。

むなしさを知り

いとおしむことを

老いてゆくことを

受け容れる

こと を。


二度と会うことのない

今日という日に

有難うの思いを込めて。

森の季節、風の色

なにごとのおはしますかは知らねどもかたじけなさに涙こぼるる