心の素描~ふる里の夏
※これは、ひさの心に浮かんだ言葉をそのまま書き留めたもので、きちんとした文章にする意図があったわけではない。
あけ放たれた堂縁から川風が庭の木々をぬけてくる涼風、池の鯉を楽しまれている祖父、そこへ麦茶を丸盆にやさしい祖母、目を細めて絵筆を持たれる父、台所からまくわ瓜を大皿いっぱいに母、外遊びに夢中だった兄がいて、弟たちがいて、オカッパのわたしがいて、山羊がいて、ダリアに百日草が咲き、蝉が降るようにないていた、もうすぐお盆、仏様をお迎えしてのにぎやかなお盆です。
大伯父様は東京からご家族とご一緒に。先ずは仏前に、お墓参りに、庭の花を切ってお供えします。ひんやりした庭を抜けると茗荷畑。その土手の上に、欅や杉の木立に囲まれた
「先祖代々の墓」があります。
夜のとばりが降りてきて仏壇に灯がともり、中座敷に膳が並びます。「これは美味い、大したうまい」と舌鼓を打たれる大伯父様、膳の中央に母はとっておきのお小鉢。大伯父様への茗荷のもてなしに喜々としておりました。
カラシ色の地に、黒のモダンな柄の単衣。それは母が一番嬉しかった外出着で、父に「よく似合うね」といわれ、ほほ笑みを交わしていた父と母。幼かったわたしには そんな一ページも私の心の絵本の中にしっかりと納められているのです。
仏様になられた御先祖様は、いつでもどこでも、花の上にも木々の枝々にも流れる雲の上にも生き続けて私たちを見守っていてくださる。永遠に生きていて居てくださる。本当に有難くこれ以上の幸せはあるでしょうか。深い絆で縛って、その折々の尊い思い出の中から生き方を教えてくださいました。
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