心の素描~壺

   レンガの窓辺


風はわたしにききました

この壺はあなたが作りましたか

いいえ、わたしがつくったとは

思えません


風は炉にききました

これはあなたが焼きましたか

いいえ、わたしが焼いて出来たとは

考えられません


風は水色の釉薬にききました

この色はあなたの色ですか

いいえ、わたしの色で出来たとは

思えません


焼き台に乗せられた壺は

静かに炉に抱かれていく

真っ赤な炎の中で壺は

釉薬の溶ける瞬間を色で示し

神秘の世界を 

深めていく

           ひさ 『野火』


森の季節、風の色

なにごとのおはしますかは知らねどもかたじけなさに涙こぼるる