心の素描~筆
竹の筆
ひもを解き ふたを開くと
竹の筆
金沢の山深い谷に
自生して居た竹
吹雪に耐え
凍てつき
重く雪を被っても
折れそうで折れない
山の仏の采配に
竹として 生きるもの
筍として 食されるもの
この竹は 筆になった
墨を含むとき
髪の毛のようにそがれた穂先は
どんな表情を見せるのだろう
梅香る朝 墨を摺る
枯れ切った筆は
たっぷりと青墨を含み
心地よく 自身の重みで
一点から動き出す
しなやかにカーブして
真っ直ぐに 切り込んで
波打ちながら
広い広い墨世界へ
深い深い墨世界へ
わたしの心は
筆にまかせて
ついて 行く
ひさ 『野火』
0コメント